ご挨拶

京都大学経済研究所は1962年の創立以来、学術動向および社会的要請に対応した研究組織・研究体制の改編を積極的に行いつつ、国際的にも高い評価の研究成果を積み上げてきました。その結果、本研究所は経済理論の研究拠点として広く内外に認知されるに至りました。とりわけ、本研究所の特色は複雑系経済学、ゲーム理論、計量経済学などを内容とする先端的な経済理論を中心にすえて世界レベルを意識した研究を行っている点にあります。同時に、現実経済への経済学の応用のための研究(政策研究、戦略研究)を通じて、広く社会に貢献していくことにも力を注いでいます。こうして本研究所は、発足以来、先端経済理論研究の国際的ハブとして、広く内外の研究者との共同研究を推進してきました。さらに、共同研究を行うことで、本研究所が次代を担う若手研究者の教育・育成にも貢献しております。

こうした研究・教育活動はわが国の経済学界・経済学の発展を望む研究者コミュニティだけでなく、国際的な共同研究者のネットワークの要望にも応えようとするものです。本研究所の特色を活かした貢献の必要性が認められ、京都大学経済研究所は、平成22年度から、「複雑系経済学」と「経済戦略と組織」という2つの先端経済理論領域の研究を推進するという中期的な目標のもと、共同利用・共同研究拠点「先端経済理論の国際的共同研究拠点」として文部科学大臣より認定を受けました。本研究所が培ってきた研究資源と国際的ネットワークの質の高さ、先端経済理論研究の国際的ハブの形成という活動の社会的意義を公的に評価していただいた結果と受け止め、今後とも拠点事業の充実、発展をはかっていく所存です。

経済研究所所長 教授 溝端佐登史

拠点事業において、本研究所が誇る人的資源はもちろん、研究施設、経済学研究のためのデータベース、ディスカッションペーパー・国際ジャーナルなどの発信媒体といった研究資源を公共財のように広く内外の研究者に提供しており、かつ全国の研究者と本研究所の研究スタッフの間で、組織的な共同研究を推進していくためのさまざまな機会を整備しております。

特に拠点活動の一環として国際ジャーナルPacific Economic Review (PER) 12月号の(年4回出版のうちの1回)出版開始いたしました。この雑誌は、もともと、Hong Kong Economic Associationが編集・制作してきた学術誌で、アジア圏を代表する学術誌として、世界の経済学会で高い評価を受けています。従来から編集に携わってきた国立台湾大学に並んで、本年度から、京都大学経済研究所が編集に参加することで、東アジアを代表する専門学術誌の地位を築くことを目指しています。

事業の運営は研究者コミュニティの代表を加えた共同利用・共同研究拠点運営委員会に担われています。具体的には、特定のメインテーマと一般研究課題の2つの課題に基づく共同研究プロジェクトの公募を行っています。これまで多くの地域の大学の研究者からご応募をいただき、多数の独創的な研究成果が生み出されることが期待されます。このプロジェクト研究を中心にして、先端経済理論研究に関する国際コンファレンス、シンポジウム、セミナーなどを積極的に開催し、国際的な情報発信も行われています。さらに、国内客員教員もまた全国公募によって選考しており、それにより先端経済理論研究への貢献だけではなく、共同研究を主導する担い手の育成とネットワークづくりを期待しています。

本研究所の共同利用・共同研究拠点では、主に施設に滞在し、研究資源・国際研究ネットワークを共同利用することにより、外部研究者の皆様と本研究所の研究スタッフの間の研究上の相乗効果が生まれ、多数の独創的な研究成果が生み出されていくことを切に願っております。自然と多くの研究者が集い、そのなかから国際的なレベルと研究者コミュニティの要望に応える新しい研究成果を発信する、これこそが本研究所の強みに依拠した共同研究の姿であると確信しております。

平成24年5月1日


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